山さんの 快適トレッキングのすすめ 基礎知識編 2-1


1 山の天気と気候の知識・2 アクシデントの対処法

【1 山の天気と気候の知識】
日本は四方を海に囲まれ、四季があり、温暖で、山の多い特徴を持った国と言えます。このため狭い国土ながら、複雑な気象条件が生まれ、予報もむずかし側面を持っています。日本の気候とともに山での気候の特徴を多少でも知識があれば、いざというときに役立つはずですので簡単に山の天気、気候の知識を説明しておきます。

・日本の気候の特徴
 
日本には大平洋と日本海という2つの大きな海を抱えています。この大きな海からの上昇気流によって天候が左右されています。天気は西から変わって行くいいますが、日本からの西は中国大陸、シベリア大陸、アジア大陸と大きな大陸が控えています。そこからの気圧の軍団が移動しながら日本にかかつてきます。その際、高気圧が日本をおおう場合は天気は晴に向かい、低気圧が近ずくと天気は崩れて来ます。低気圧は日本海の海面からの湿った上昇気流を含み、雲を作り、雨を降らします。冬は低気圧の通過後、大陸からの冷たい気団が日本に流れ込み、日本海の海水の上昇気流をたっぷり含み、山にぶつかり、上昇して上空で冷やされ、雪となって日本海側に雪を降らせます。夏は大平洋高気圧がどっぷり日本をおおっている場合は晴の暑い夏が続きます。それも大平洋高気圧の張り出しの強さで気候は変化をします。張り出しが弱いと、大陸の冷たい高気圧が張り出して来て、冷夏の夏が形成されます。このような場合は大陸の低気圧も張り出し、雨の多い夏になります。春と秋は大陸の高気圧と低気圧が交互に日本列島にかかり周期的に天気は変わって行きます。梅雨は梅雨前線あるいは温帯前線でこの時期は日本列島に居座り、湿った海水の上昇気流とモンスーン地帯の湿った空気をジェット気流が運び、日本列島に大量の雨を降らします。

・山の天気の特製
 
山の天気は平地の天気と同じ流れになりますが、標高、地形の複雑さ、気温、風などで平地とは全 然違う様相を見せます。特に顕著に見られるのは、
・気温の低下・・・山の気温は標高100m上がるごとに0,6度気温が下がります。天気は平地と同じであっても気温は全然違った、数値になります。そのため平地が晴れていれば、上昇気流が生じ、雲や霧が発生しやすい、状況になります。
・天候の回復の遅れと天候のくずれの早さ・・・平地では前線の通過後は比較的早い時点で天候が回復されるが、山ではその回復がかなり遅れ、場合によっては2,3日要することもあるます。また天気のくずれも、平地にくらべて早く訪れます。これは平地にくらべて山では前線がかなりの幅を持っているからです。
・寒冷前線と温暖前線・・・前線とは暖気と寒気がぶつかりあっている所で、気団の争いは雨を降らせます。冷たい空気は重く、暖かい空気は軽く、二つの空気がぶつかると、暖かい空気は持ち上げられて雲を生み、雨を降らせる事になります。暖かい空気の強い所が温暖前線、冷たい空気が優勢だと寒冷前線、勢力が同じ位の時は停滞前線としてしばらく日本列島に居座ります。この雲の高さによつて、雨の降る範囲、場所が決まって来ます。
山では雲を見て、天気を予測するという事が良くいわれますが、実はこういう事が起因しています。


・いろいろな雲の知識

雄大積雲(入道雲)
 
もくもくと上がる入道雲は夏の風物詩。正式には雄大積雲と呼ばれ、日中の日差しで発達し、日没後には急速に消滅してゆく。

かなとこ雲(雷雲)
 
雄大積雲が発達をして、圏界面に達すると、もくもくした積頭が消え、かなとこ雲(雷雲)となる。近くに発生したら要注意です。すぐさま山小屋に避難するか、安全なところに逃げ込みましょう。

英状雲(レンズ雲)
 
レンズ雲は上空の風の流れが早い事を物語っています。天候悪化の前兆とされる雲の一つです。

すじ雲
 
刷毛ではいたような薄い雲で、空高く浮かぶ巻き雲は、すじ雲とも呼ばれている。不規則な形状の巻雲は一般的には好天を告げるものです。

巻積雲
 
巻積雲は丸みを帯びた雲塊が群生するその姿から、うろこ雲、いわし雲などと呼ばれている。天気の変わり目に良くあらわれる雲です。

乱層雲(雨雲)
 
空一面に低く暗く垂れ込めた雲で、文字どおり雨や雪をふらせる、悪天候を代表する雲で、低気圧や前線を伴って現れる。

低気圧と高気圧
 
低気圧といえば普通、温帯低気圧の事を指します。海からの湿った空気を中心付近から上昇気流として上昇させ、雲を作り、雨を降らします。低気圧は前線を伴っていますので低気圧と前線の位置関係で天気は大きく変わって来ます。一般的には低気圧-上昇気流-悪天(雨)という図式です。高気圧には比較的乾燥した空気を持つ大陸性高気圧と海上に中心を持つ湿った空気を送り込む高気圧があります。大陸からの高気圧は好天をもたらしますが、冬には海水の水分をたっぷり 吸って日本海側に雪を降らせます。海からの高気圧は湿った空気を送り込むので要注意です。

以上山の天気と気候の知識という事でごく基本的なことについて書いてみましたが、気候、天気に関しましてはいろいろな要素が組み合わさり、その日の天気が形成されております。訓練と経験と知識により多少の判断は出来るようになりますが、あまりにも複雑な世界ですので、天気報、ご自分の予想も半分位の気持ちで、余裕を持った行動と悪天候対策もいつも万全の用意がいいと思います。

【2 アクシデントの対処法】

・雷対処法
 
山での雷は命に影響する危険なものです。出来る限り雷に遭遇しないように注意を払う事が肝要です。そのためには夏場はとくに早立ち、早着をするようにしましょう。もし遭遇したら雨具をしっかり身につけて、体を縮めて、大地とのアースにならないようにすることです。また金属等は体から離します。また高い木や岩は避雷針の役割がわりになりますので、近くには決して近付かない。夏場では早立ち、早着を敢行し、雷雲の中では行動をしないことが危険を少なくする方法といえます。

・熊に出会ったら対処法
 
山で熊に出会った話は良く聞きますが、こちらから山に住んでいる熊のなわばりに入って行くのですから、熊からしたら我々人間は家宅進入です。熊は自分から人間を襲う気持ちは無です。もし出会ったら
・大きな声を出さない
・物を振り回したりして刺激しない
・そして逃げない、止まらない、無視する
とくに熊は秋にドングリや栗や山の実が食べ頃になると冬眠のために一生懸命食べなくてはならないのでその頃が一番気が立っているので注意は必要です。

・蛇に噛まれたり、ハチにさされた場合
 
熊と同じにここでも人間が蛇やハチのなわばりに入って行くので、人間の方が注意をしながら歩いて行きましょう。もし出会っても静かにそこから立ち去りましょう。万が一蛇にかまれた場合、特にマムシの場合猛毒のため傷口より中心部に近い所をしばり、毒が全身を回らない様に気を付ける。また噛まれた場所をあまり動かさないようにして病院へ直行しましょう。
ハチの場合は傷口を流水で洗い、冷やしておきましょう。痛みはそれで1日くらいでおさまるでしょう。腫れは2,3日残ると思いますが。しかし毒性の強いスズメバチなどの場合は生命にかかわる場合がありますので、すぐ下山をして病院へいきましょう。

・けがと治療
 
山でのアクシデントの怪我は良くあります。アクシデントを想定して準備は怠らないように、山では医者や救急車は来てくれません、病院は行くまでの応急処置は自分達でおこなわなければなりません。
切り傷
切り傷の場合は止血と感染の防止です、傷口の消毒とカット絆の添付でいいでしょう。消毒は消毒剤があればいいですがもしなければきれいな水が一番の感染防止になります。
捻挫、脱臼、骨折
山での捻挫、脱臼、骨折はいちがいに損傷を特定できない場合があり、総して捻挫と総称しています。山では軽症の場合はテーピングや固定による処置で自力下山を目指しますが、歩行が困難な場合は担ぎ下ろしたり、救援ヘリの要請も考えます。しかしできる限りの機能を発揮して安全地帯まで下ろし、救援を待つ努力を本人はもとよりメンバー全員が努力すべき事です。



ミヤマキンポウゲ

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